THE 読物  〜東月彦の小説〜

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zoom RSS わさびA――wasabi

<<   作成日時 : 2017/11/30 23:11  

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長編連載小説
『わさびA――wasabi』

【閑話休題】
 拝啓 夏目漱石先生

 11月26日に放送されたEテレ『日曜美術館――漱石先生 この絵はお嫌いですか〜孤高の画家 木島櫻谷(このしまおうこく)〜』を拝見しました。
 何か欠席裁判を見ているようで、あまり気分の良いものではなかったですね。
 まず先生が文展(文部省美術展覧会の略・現在の日展)の審査員になられて、木島櫻谷の批評を新聞に寄稿された文を掲載したいと思います。

 「木島櫻谷氏は去年沢山の鹿を並べて二等賞を取った人である。あの鹿は色といい眼付といい、今思い出しても気持ちの悪くなる鹿である。(第五回文展出品『草葉の山』)
 今年の『寒月』も不愉快な点に於いては決してあの鹿に劣るまいと思う。
 屏風に月と竹とそれから狐だか何だか動物が一匹いる。
 その月は寒いでしょうと云っている。
 竹は夜でしょうと云っている。
 ところが動物はいえ昼間ですと答えている。
 とにかく屏風にするよりも写真屋の背景にした方が適当な絵である。」

 うーん、確かにちょっと辛辣ではありますが、先生は英国帰りなので、向こうの批評はこんなものではないでしょうか?
 現代でもCNNの映画批評や、ヨーロッパ・サッカーの評論など読むのもはばかられるような酷評が往々にしてありますよね。
 先生は英国留学中、テイトギャラリーなどに通い、ターナーやラファエル前派を見て、絵画に対して関心を持っておられたと聞きました。
 また、津田晴楓という、『道草』や『明暗』の装丁を描いた画家に、油絵を習っておられたそうですね。

 番組では、冬の夜の竹林を描いているのに、野生の狐(動物)の目の瞳孔が細く、それは昼間のものであると指摘されたと言っていました。
 私は瞳孔より、狐が飼われてコロコロになった柴犬のように、やけに太っている姿にまったくリアリティがないなあと感じていました。
 そりゃあ、絶対はないですから、豚みたいに太った野生の狐もいるかも知れませんが、でも季節は真冬なんですよね。
 櫻谷が、下村観山になれなかったのは、その辺が理由ではないでしょうか。

 同じ京都出身なので、あまり悪く言いたくはないのですが、結局、櫻谷という人の動物画は、全般的にリアリズムに欠けるのです。
 猪の絵でも、円山応挙の技法を模倣して、独特の毛並みを表現しているようですが、その猪もまたイベリコ豚のように丸々と太った姿をしているのです。
絵空事なので、何を描いても構わないですし、ディフォルメして良いと思いますが、そうであるならば尚更、細部にリアリィティを追求すべきではないでしょうか。
 それに、岩絵の具を焼くというのは、昔から日本画にあった手法です。

 私が言うのは恐れ多いのですが、先生は決して間違っていなかったのです。
 先生のせいで、櫻谷は、竹内栖鳳や加山又造になれなかったのではないのです。
 美術界やその周りにいる人々が、櫻谷を、伊藤若冲のように”スター”にしたいようですね。
 最後は、嗜好なんでしょうね、きっと。(苦笑)
                             敬具
                                      月彦
                                      つづく








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