THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載11 微笑のあと 雨月 秋がなくなった、と鴫沢は思っている。 地球温暖化のせいで、もう九月の初旬だというのに、いまだ日中の気温は連日三十度を超えていた。 山内にある楓も、かさかさに渇いた青い葉をつけていて、一向に紅葉する気配を見せないでいる。 このままではハワイや東南アジアみたいな気候に、… トラックバック:0 コメント:0 2006年10月14日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載4 微笑のあと その日、唯識の庭は夕焼けの中にあった。 鞍馬石の影が、白砂の上に長く伸び、庭全体が紅鬱金(べにうこん)に染まり、真午に観る情景とはまた違った趣きがあったのである。 それは日本画の屏風絵のごとく淡い色彩なのに奥行きが増し、海鳥の啼き声が聞こえてきそうな錯覚を起こさせる。 清方は、陶然とし… トラックバック:0 コメント:0 2006年09月20日 続きを読むread more