テーマ:短歌

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載39 奈良三彩      天女の舞い 「住所はどうやって?」  ゆずり葉は、キャラメル・フラパチーノを一口飲んでから訊いた。 「先日の関西での公演の時、京都の出版社で聞きました。あなたが、歌集をお出しになった、あの会社です」  宗悦はストローでアイスコーヒーを混ぜながら言う。 「・・・・ああ」  三軒茶…
トラックバック:0
コメント:3

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載20 奈良三彩 ※これまでのあらすじ※ 歌人のゆずり葉は、ブログを開設していて、そのコメント欄に、能楽師の日吉宗悦が仮名で投稿 してくる。 それを見た陶芸家の聚が、ふたりの関係を疑いはじめる。 彼は、三彩の製作がうまく行っていなかったのだ。 また宗悦は、前妻の香澄から、一人息子の宗誉の親権を譲って欲しいといわれる。 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載15 奈良三彩  ゆずり葉がふり返ると母の倭子だった。  「――お母さん」 「大きな声だったわよ」  倭子は今年五十五歳になる。彼女には一重の目尻の長い目があって、涼しげだった。ゆずり葉とは口唇の形はそっくりだったが、全体にあまり似ていない。 「ごめんなさい。・・・・腰の具合はいいの?」  ゆずり葉は亡父…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載14 奈良三彩  ゆずり葉はその日、作歌に励んでいたのだが、どうも気持ちが乗らず、馬場あき子の歌集を眺めていた。  尊敬してやまない歌人の一人で、もう何度も読み返したものだったのである。  われのおに おとろえはてて かなしけれ  おんなとなりて いとをつむげり  ゆずり葉は、馬場のその歌が好きだっ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載5 奈良三彩  男は日吉宗悦(そうえつ)といい、能楽師だった。  彼は、室町時代に一世を風靡した近江猿楽の犬王の末裔だったのである。 宗悦の曾祖父の宗長(むねなが)が伝説の名手といわれ、戦後独立を許されて、日吉流の再興がなされた。そして、ようやく流派の悲願であった能楽堂も、品川・御殿山に来夏、完成をみることとなった…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載4 奈良三彩  それから、二日ほどして、またウナイ乙女なる人物からコメントがあった。  投稿者:ウナイ乙女  2005年3月2日 午前3時13分  コメント:  なぜ、菟原処女の行動が理解できないの?  真摯に純真な恋を貫こうとすればするほど、彼女の行為は自然なものではないかしら。    現代のように、い…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載3 奈良三彩  ゆずり葉は、『ささら――ゆずり葉の歌――』というインターネットのブログを開設している。数少ないファンとの交流をより深めるために、第一歌集を出版した直後にアップロードしたのだった。勿論、本の広告も兼ねているのは言うまでもない。  ブログのトップには、青々と茂ったゆずり葉(弓弦葉)の写真を掲載している。 …
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載2 奈良三彩 「・・・・わからないのよ」  独り言のように、ゆずり葉が言う。 「何が?」  聚が訊く。 「万葉集には、菟原処女の他に、妻問い(つまどい)で自害した女の子が三人も登場するの。畝傍山(うねびやま)のさくら子、耳成山(みみなしやま)のかずら子、真間の手児奈(てこな)・・・・」 「・・・妻問いって?」…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

THE 読物  ~東 月彦の小説~

※新連載※  連載1 奈良三彩   奈良三彩     処女塚(おとめづか)  芦屋の 菟原処女(うないおとめ)の 奥津城(おくつき)を  行き来と見れば 哭(ね)のみし泣かゆ           (巻9・1810)  芦屋浜からの海風と、六甲山からの颪(おろし)が鴇色(ときいろ)に染まる晩春に、処女塚は…
トラックバック:0
コメント:1

続きを読むread more