テーマ:不倫

禁じられた影

連載4 禁じられた影     2 「この間ね……」  みぎりが、にこにこしながら言う。 「うん?」  篁は、彼女の微笑みを訝しく思った。 「渋谷歩いていたら、男の人に声かけられたの」  みぎりは、代官山寄りの中目黒に引っ越していた。 「ナンパ?」  彼はバーボンのソーダ割りを一口飲んだ。 「最初はそう思っ…
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禁じられた影

連載3 禁じられた影  篁には、やりたい企画、――否、絶対に撮らなければならない映画がある。  今のままでは終わりたくなかったし、映画史に残るような秀作になるという確信があったからだ。  五年ぶりにシノプシス(梗概)を書きはじめたが、夜ごと悪戦苦闘している。  イメージは膨らむ一方で、アイデアが枯れるということはなかった…
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THE 読物 ~東月彦の小説~

連載2 禁じられた影  篁は映画監督だった。  大学生の時に冗談半分で書いたシナリオが、桜梅映画主催のK氏賞を獲り、幸運にも監督デビューすることができたのである。  二十一の歳だった。  彼の映画は、学生監督ということもあって話題になり、宣伝も手伝ってか、大ヒット興行になったのである。  その映画に主演した、女…
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THE 読物 ~東月彦の小説~

新年あけまして、あめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 さて、誠に勝手ながら予定を変更して、中編小説『禁じられた影』 をお送りします。 なお、短編連作小説『桜のすべて』第四部 海津大崎は、改めて 後日掲載いたします。 あしからずご了承ください。                           東…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載14 桜のすべて 第一部 砧  その夜遅く、とな瀬が帰宅すると、家の前で、香眞俊作が待っていた。 「・・・・・」  彼女は一瞬、怖くなって勝手口からこそこそ入ろうとしたが、玄関から堂々と帰るべきだと思い直した。 「あっ、とな瀬さん」  彼女の姿を認めた香眞が言う。 「ああ、どうも今晩は」  とな瀬…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載11 桜のすべて 第一部 砧  ――・・・・私は一体、何をやっているのだろう。  とな瀬は今、青山にあるカフェのオープン席にいた。  時刻はすでに夕刻で、246を家路に急ぐサラリーマンやOLの姿が見える。  その日、彼女は家に一人でいるのが嫌で、ふらふら当てもなく、東京の街を彷徨っていたのである。  先日…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載10 桜のすべて 第一部 砧  日本橋のデパートで催された『現代いけばな展』は大盛況であった。  それは、現代を代表する各流派の家元が作品を出展していて、流派ごとの様式にのっとったものや、定型にとらわれず自由にいけられた花々だったのである。  尊も作品を出していて、花器にいけられた大ぶりの芭蕉の葉と、ピンクの…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載9 桜のすべて 第一部 砧     花筐(はながたみ)  とな瀬は、ヴィシソワーズを一口啜った。  香眞は、冷製コンソメを食している。  飯倉にあるフランス料理店だった。  メインは、香眞が仔羊のデビルソースを、とな瀬はオマール・ブルトン海老のポワレを注文している。  その夜の彼女は、淡いクリーム地に縞…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載6 桜のすべて 第一部 砧  尊が窓外をぼんやり見つめている。  そこからは品川駅が見え、新幹線がひっきりなしにホームに滑り込んで来ては、出て行った。  伊沙子はベッドで寝そべっている。ローマ神話の女神みたいに、真っ白いシーツを躰に巻きつけて。  ホテルの一室だった。 「・・・・ねえ」  伊沙子がぽつん…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載4 桜のすべて 第一部 砧 「いやよ、――絶対にいや!」  内海伊沙子は、叫ぶように言った。 「そう言われてもなあ・・・・」  尊は溜め息をつく。 「こんな形で、さよならなんて絶対にいやだわ!」  いつしか、彼女の声は涙声になっていた。 「潮時だと思うよ。それに、こういうのは、ルール違反じゃないのかな…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

新連載 桜のすべて 第一部 砧(きぬた)      村雨  夜半からの村雨は夜明けとともにあがったが、街全体をうすい靄が覆い、いまだ未明のようだった。  日ははるか彼方にあり、微風にふるえる朝靄に、陽光は屈折して見える。  舗道は濡れて銀色の光を放っていて、まるで古いモノクロ映画の世界にいるようだった。  そ…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載23 薪御能  槻弓は、男を喜ばせる術を何もかも体得しているようだった。  情交において、つねに積極的だったし、外見の派手さと同じように、その肉体で異性の心を掴んで放さなかったのである。  それに彼女は、自分の躰が男にとって十分魅力的であるということを分かっていて、どのようにすれば男が喜悦するかも熟知しているよ…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載19 薪御能  源田の妻は、くも膜下出血による急逝だった。  井子は、築地本願寺で行われた通夜と本葬に参列したのである。  彼女は、生前の源田の妻には一度しか会ったことがなかったので、葬儀の写真を見るまで、顔を思い出せないでいた。  井子は妻が亡くなって、源田とのことを、これまでのように後ろ指さされることもな…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載17 薪御能  井子と源田は、渋谷にある『水竹居』という日本料理の店にいた。  渋谷といっても厳密には、京王井の頭線・神泉駅の近くで、静かな住宅街の真ん中にあったのである。  水竹居という名は、竹久夢二に同名の美人画があったのと、中国の故事によると桃源郷を意味するようで、そこから取られたようだった。  店の主…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載14 薪御能  鼠志野の花瓶にいけられた紫苑が揺れていた。  その花は、つい先ほど源田周一郎がプレゼントしてくれたものだった。  今、源田は簗瀬井子の双の乳房を鷲掴みにし、乳首に舌を這わせている。  彼女には自慢の肉体だった。身長も一七二センチあり、バスト・ヒップともに八十九、ウエスト五十八という体型だったか…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載49 微笑のあと  千子の容態は悪化する一方だった。  大量のモルヒネの投入によって、意識は朦朧とし、うわ言のような言葉を繰り返すだけだったのである。  しかし、投薬がなされなければ、激痛のために身をよじって悶え苦しまなければならない。  医師もすでに見放している。  あとは家族に見守られながら、“その時”…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載44 微笑のあと  清方はあれから二度、雪乃のバーに行ったが、彼女の見る眼は、まるで”一見さん”と接するような、よそよそしいものだった。  彼は、妻が病床にあって、そんなことをしている場合ではないと分かっていながらも、そうせざる終えない精神状態だったのである。  日に日に千子が正気を失ってゆくのを目の当たりにし…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載41 微笑のあと     拈華微笑(ねんげみしょう)  雪乃が最後の客を見送るために、玄関を出るところだった。  二人の男客は、一人が府会議員で、もう一人は関西の建設業界のドンだという。  清方はカウンターの端で、モルトウイスキーを飲んでいた。  雪乃が経営するバーだった。  時刻は午前0時を少し回ってい…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載33 微笑のあと  年老いたバーテンの川奈が、バカラのグラスを磨いていた。  マイルスのクールなバラードが流れている。  壁面には紫檀が施され、マルニのマホガニーの椅子、マリー・ローランサンのエッチングが飾ってあり、シックで重厚なインテリアだった。  清方は、マティーニのスタッフドオリーブを弄んでいる…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載28 微笑のあと ※お知らせ※ いつもご愛読ありがとうございます。 本日分の掲載を持ちまして、今年度は終了とし、冬休みを頂戴いたし ます。あしからずご了承くださいませ。 なお、連載再開は新春1月7日(日)を予定しております。 少し気が早いですが、みなさま、良いお年をお迎えください。                   …
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載27 微笑のあと  薄明かりの中で、清方の華奢な指が、雪乃を探し当てた。  それは、しっとりとして、花液がすでに潤っている。  彼は親指の腹で、彼女の花蕊(かずい)をやさしく撫でてみる。 「・・・・ふっ」  雪乃は押し殺した吐息を漏らす。 「・・・・・」  それから、清方の中指が花序をかき分けて、花卉(…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載25 微笑のあと  その朝、英は苛立っていた。  子飼いだと思っていた三枝慈慧が、法主選挙に出馬したからである。  円仁寺にある彼の執務室だった。  ――智恵院の座禅体験ツアー、無農薬の京野菜の栽培や精進料理を提供するアイデアは、私が出したものではなかったか。前科者のようなあいつを拾ってやったのは、誰だったの…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載20 微笑のあと  雪乃は今、シャワーを浴びて濡れた躰にバスローブをまとっていた。  ベッドでは、清方がまどろんでいる。  金閣寺の近くにある彼女の部屋だった。  雪乃。本名、栢山涼子。齢三十四。雪乃という名は、舞妓時代からの源氏名だった。彼女は小学生からの夢だった舞妓になるために、高校を中退して花柳界へ飛び…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載17 微笑のあと 「・・・・ああ」  雪乃は、こらえ切れずに熱い吐息を何度も吐いた。  彼女は今、清方の下で激しく身悶えし、現実と忘我の間を行き来しているようだった。 「若いって、ほんまにええなあ・・・・」  雪乃はうわ言のように呟き、確かめるように何度も何度も、彼の腕や胸をさするのだった。 「・・・・・…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載9 微笑のあと 「・・・・来週から東京支部に出張になったよ」  清方は、千子の目を見ずに言った。 「急な話なのね」  彼女は、清方に麦茶を手渡す。 「うん、・・・・大事な会議があるんだ」  清方は嘘がうまい方ではない。 「そう。長いの?」  二人は母屋にいて、遅い夕食を摂っていた。  その日…
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