わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第十一回 ◇ 今回は、趣向を変えます。 なかがきとして―― ”なかがき”という日本語はありません。 小説には、”まえがき”、”あとがき”があります。 主に、作品に対する解説であったり、作者がその作品を書くに至った心情・経緯などが述べられていると… 気持玉(1) コメント:0 2020年09月07日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第十回 「そもそもさあ……」 紫苑が口をひらいた。 「うん?」 あふひが、紫苑を見た。 インターネット通話の最中である。 「あたしが、鮨職人になろうと決めたのは……」 「太郎さん?」 梨里が訊く。 「それもあるけど、今、あたし、地元の鮨屋でバイトしてるんだ… 気持玉(0) コメント:0 2020年08月24日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第九回 酷暑お見舞い申し上げます。(苦笑) 冗談はさておき、本当に異常気象ですね。 くれぐれもご自愛下さい。 東月彦 3.夏のマグロ その夜、あふひ、紫苑、梨里の三人は、”スカイズ”… 気持玉(0) コメント:0 2020年08月16日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第八回 由自のスマホが鳴る。 液晶画面を見ると、銀座の回転寿司屋で働いている杉浦正晴だった。 「もしもし、――あっ、どうも」 「由自、助けてくれー!」 杉浦の叫び声が響く。 「へっ?」 「なあ、由自、頼むよ!」 「落ち着いてくださいよ、杉浦さん……」 「参っ… 気持玉(0) コメント:0 2020年08月03日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第七回 ◇ 目白の椿山荘の庭園は、花の季節も終わり、まばゆいほどの新緑が映え、木もれ日がふり注いでいる。 小さな丘に石段があって、その横を小川が流れ、梨里はお見合いの相手と、散歩していた。 その静けさは、とても二十三区内とは思えない。 私市四郎(きさいち・… 気持玉(0) コメント:0 2020年07月19日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第六回 ◇ その午後、あふひは久しぶりに母・ゑ々子(ええこ)に会った。 「ほんまに久しぶりやね」 そう言って、母は紅茶を出してくれた。 「ありがとう」 あふひが言う。 母は離婚後、妹の明子(あきらけいこ)と、江坂のマンションに住んでいる。 「元気… 気持玉(0) コメント:0 2020年07月07日 続きを読むread more
わさび②――wasabi 長編連載小説 『わさび②――wasabi』 第五回 2.無口な猫 紫苑は、茨城・水戸にある実家に帰っていた。 あふひ、梨里とシェアしていた四谷のマンションを引き払い、それぞれの道を歩みはじめたのである。 就職をあきらめ、経済学部・経済史学科の大学院生になり、週に三日ほど出席すれば良いので、戻る気になったのだ… 気持玉(0) コメント:0 2020年06月21日 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十六回 ◆ 金太郎が死んだ。 二十五歳だった。 あれから十年が経過している。 金太郎はすでに、『狩野永劫』を名乗っていた。 死が、いつも身近にあった時代である。 命が、軽い時代でもあった。 顛末(てんまつ)はこうだ。 金太郎は南は九州・高千… 気持玉(1) コメント:0 2020年05月07日 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十五回 六、終わりのはじまり 織田信長公が暗殺されてから、豊臣秀吉公が天下人になられた。 安土城の天守閣と本丸が焼失したとはいえ、絵師としての狩野永徳は、人一倍美的感覚が鋭かった信長公に認められ、その名は天下にとどろいたのである。 それでも、戦の時代は終わりそうに… 気持玉(0) コメント:0 2019年08月15日 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十四回 ◇ 犯(や)っちまって、殺(や)っちまえば良いんだよ。 その言葉が、月山の頭から離れなかった。 男は、その人生において三度、女に”翻弄”されるという。 一番最初は母親で、二番目は妻、そして最後は実娘である、と。 すべて”夜叉”である。 ど… 気持玉(0) コメント:0 2019年07月16日 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十三回 ◇ 昨日、妻の賀歌はまた、実家へ帰った。 表向きの理由は前と同じ、父親の病のせいだという。 今度は長くなるかもしれない、と賀歌は言った。 月山は大きな吐息をつく。 連日の寝不足で、ぼーっとして集中力がなく、深く物事を考えられなくなっている。 しか… 気持玉(0) コメント:0 2019年06月10日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十二回 五、黒いささやき その朝、金太郎は元信に命じられて、膠液をつくっていた。 元信は、『夏冬芭蕉図屏風』の制作に没頭している。 狩野の屋敷は、京都御所の西、晴明神社の東にある。 中庭にあるイロハモミジの新緑が、光り輝いていた。 安土城の障壁画はようやく完成し… 気持玉(0) コメント:0 2019年05月18日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十一回 ※令和元年おめでとうございます。 新しい時代の、みなさまのご多幸をお祈り申し上げます。 東月彦 ◇ もうすぐ安土城も完成するところまで来ていた。 相変わらず金太郎は、兄弟子たちにこき使われていたのである… 気持玉(0) コメント:0 2019年05月03日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第十回 その朝、月山はまじまじと虎の屏風を眺めていた。 六曲一双の屏風で、経年による劣化が著しく、背景に金箔が施してあったが、所々にハゲが目立った。 右隻(うせき)には、墨による竹林の中で、一頭の虎が寝そべっている図で、左隻(させき)には、もう一頭の虎が大空にむかって咆哮する姿が描か… 気持玉(0) コメント:0 2019年04月07日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第九回 第四章 月夜 あれから一週間経過したが、賀歌はまだ帰っていない。 昨晩も、妻のスマホに連絡したが繋がらず、仕方なく実家の方に電話したが、忙しいという理由で出てこなかったのだ。 それに、病にふせっているはずの義父が電話口に出たのである。 絶対に浮気している。 … 気持玉(0) コメント:0 2019年03月08日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第八回 ◇ 炎のはぜる音がした。 母屋につけた紅蓮の火は、ますます勢いを増し、軒下にまで届きそうになっている。 金太郎はぼーっと火を眺めていたが、だんだん怖くなってきた。 「うぉおおおおおっ!」 と、熱さで頬を紅潮させて叫んだ。 いくら狩野の家を憎んでいると… 気持玉(0) コメント:0 2019年02月25日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第七回 ◇ また、スマホの呼び出し音が鳴った。 明月が、ちっと舌打ちする。 液晶画面を見ると、月山からの電話だった。 京都の源龍寺である。 朝の勤行(ごんぎょう)を終えたばかりであった。 昨晩から、電話は鳴りっぱなしなのだ。 やっと呼び出し音が止ま… 気持玉(0) コメント:0 2019年01月19日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第六回 新年明けましておめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 東月彦 第三章 真夜中の咆哮 何の音だ?いまのは……。 月山が、ハッと目覚めた。 四囲(あたり)は、真の闇の中にあり、月明かりも消えている… 気持玉(0) コメント:0 2019年01月05日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第五回 その夜、賀歌は般若心経を写経していた。 静謐に硯(すずり)をうち、真摯に用紙にむかい、一心に筆をすべらせる。 かすかな息づかいだけが聞こえる。 どんな願いがあるというのか。 何を祈るというのか。 尋ねてみたかったが、曖昧に軽く一蹴されそうなので聞かなかっ… 気持玉(0) コメント:0 2018年12月09日 読書 本 小説 続きを読むread more
怪譚 屏風の虎 怪譚 屏風の虎 第一話 屏風の虎 第四回 ◇ その朝、湖は、死んだように美しかった。 朝日を浴びた水面は金色に輝いて、神々しく、数羽の都鳥(ユリカモメ)が波間に浮かんでいるのが見える。 その城は、まるで雲を突き抜け、天にまで届くのではないかと思われるほどの威容を示していた。 誰も見たことはな… 気持玉(0) コメント:0 2018年11月24日 読書 本 小説 続きを読むread more