テーマ:歌舞伎

禁じられた影

連載12 禁じられた影  与十郎は、蒲田の商店街を歩いている。  彼の実家は、そのアーケード街のはずれで鮮魚商をやっていて、二男だったのだ。  母親の久枝が、先代の松本幸四郎(白鸚)の熱烈なファンで、幼い頃から、歌舞伎を観に連れて行かれたのである。  物心ついた時、宗十郎の助六の揚巻、文七元結の女房お兼などの女形…
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禁じられた影

連載6 禁じられた影  浅草公会堂の舞台では、『勧進帳』が上演されていた。  若手大歌舞伎公演で、染五郎の弁慶、菊之助の富樫、駿河次郎を澤村与十郎が演じている。  富樫の執拗な検問に、駿河次郎ら義経郎党が殺気立って斬りかからんとするところを、弁慶がぐっと押しとどめる場面であった。  篁は、食い入るように見つめている。 …
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載28 金箔をあかす  静一はソルボンヌの呻き声でハッと目を覚ました。  天井から吊された裸電球が大きく揺れて、青金箔の砂子を蒔いた日本画のように、風景がぼやけて見える。  そこは薄汚い倉庫のような所で、全裸の男たちが十数人いて、何かを取り囲み、にたにた笑いながら見下ろしている。  人垣の隙間から、女の白い尻が…
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THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載41 奈良三彩  聚は今、品川・大崎にいる。  彼は、民家の脇にある電柱の陰に身を潜めるように佇んでいた。  そこからは、古い平屋造りの日吉能舞台の建物が見える。  その夜、定期公演がその舞台で行われ、宗悦は『葵上』のシテの六条御息所を演じることになっている。  聚が腕時計を見ると、午後九時三十五分をさしている…
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THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載15 奈良三彩  ゆずり葉がふり返ると母の倭子だった。  「――お母さん」 「大きな声だったわよ」  倭子は今年五十五歳になる。彼女には一重の目尻の長い目があって、涼しげだった。ゆずり葉とは口唇の形はそっくりだったが、全体にあまり似ていない。 「ごめんなさい。・・・・腰の具合はいいの?」  ゆずり葉は亡父…
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