THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載33 微笑のあと 年老いたバーテンの川奈が、バカラのグラスを磨いていた。 マイルスのクールなバラードが流れている。 壁面には紫檀が施され、マルニのマホガニーの椅子、マリー・ローランサンのエッチングが飾ってあり、シックで重厚なインテリアだった。 清方は、マティーニのスタッフドオリーブを弄んでいる… トラックバック:0 コメント:2 2007年01月21日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載10 微笑のあと のぞみの車窓から、風景が飛ぶように流れていた。 それは田園風景と青空の境界がなくなり、ステアしていないカクテルのように、色の帯だけが過ぎ去ってゆくのである。 つい先ほど、名古屋を後にしたばかりだった。 清方と雪乃は、その車中の人になっていたのである。 「・・・・怒ってらっしゃると思… トラックバック:0 コメント:0 2006年10月11日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載6 微笑のあと 邪宗門 その料亭は、嵐山の渡月橋の近くにあった。 ラフな格好で来てくれ、と法主の英に言われたが、清方はネクタイこそしなかったが、ジャケットだけは着てゆくことにしたのである。 庭にある竹林を抜け、仲居に通されたその離れの座敷に、英はひとりで待っていた。 「おお、来たか」 彼… トラックバック:0 コメント:0 2006年09月27日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載26 金箔をあかす 「ありがとうございました」 溜息と一緒に梛子が言った。 「いいえ。お疲れになったんじゃありませんか?」 疲れが滲む彼女の目元を見つめながら、海棠が訊く。 「いえ、大丈夫です。海棠さんこそ?」 梛子は藍大島に、黒紅梅地に梅花を散らしたしゃれ袋帯をきりっと締めていた。 「平気です」… トラックバック:0 コメント:0 2006年05月24日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載19 金箔をあかす 冬の旅 あれから海棠は、学生時代の同級生や、静一の行きそうな所に片っ端から電話してみたが、依然として彼の行方は分からなかった。 そのことを梛子に告げると、彼女の方でもまったく手がかりがないということだった。 「ありがとうございました」 梛子が、コーヒーを差し出しながら言う。… トラックバック:0 コメント:0 2006年04月26日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載13 金箔をあかす 玄関のチャイムを押しても、何の返事もない。 海棠は頸をかしげて、しばらく呆然としていた。 ――電話をかけてきたのは、梛子の方ではないか・・・・。 表札を確認すると、ここは間違いなく静一と梛子の部屋であって、海棠は途方に暮れた。 彼は気を取り直して、もう一度チャイムを押す。 … トラックバック:0 コメント:0 2006年04月08日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載6 金箔をあかす 「静ちゃん、お茶を習ったことあるのか?」 海棠が訊く。 「うん?・・・・習ったといえば習ったし」 曖昧に静一が答える。 「裏かい、それとも表?」 「・・・・そうだな、道誉流かな」 静一はにやにや笑っている。 「ど・う・よ?」 「そうだ」 「そんな一流あったっけ?」 … トラックバック:0 コメント:0 2006年03月18日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載33 奈良三彩 新年あけましておめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。 東 月彦 ※ その朝、佐和子は、聚の工房の掃除をしていた。 あれから夫と離婚するつもりで、京都の実家に帰ったが、彼女の居場所はもうどこにもなかったのである。 … トラックバック:0 コメント:0 2006年01月05日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載8 奈良三彩 ※お知らせ※ いつもご愛読ありがとうございます。 このたび、当方のブログのトップページに、googleの“サイト内検索”を設置いたしました。 何かと便利な機能ですので、もし、よろしかったら、ご利用いただければ幸いです。 今後とも、宜しくお願い申し上げます。 ※ 新公会堂は、奈良公園… トラックバック:0 コメント:0 2005年10月11日 続きを読むread more
THE 読物 ~東 月彦の小説~ 連載12 薪御能 ※ 眸を閉じると、真砂子の瞼のうらには、いつも安念が住んでいる。 彼女は出逢ってからというもの、まったく仕事が手につかなくなってしまった。 『朝まだき』はいまだ完成をみていない。どうしても早暁の色がうまく出なかったのである。 梅雨があけて、羊雲が入道雲に変わるころ、真砂… トラックバック:0 コメント:2 2005年07月22日 続きを読むread more