テーマ:着物

THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載33 微笑のあと  年老いたバーテンの川奈が、バカラのグラスを磨いていた。  マイルスのクールなバラードが流れている。  壁面には紫檀が施され、マルニのマホガニーの椅子、マリー・ローランサンのエッチングが飾ってあり、シックで重厚なインテリアだった。  清方は、マティーニのスタッフドオリーブを弄んでいる…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載10 微笑のあと  のぞみの車窓から、風景が飛ぶように流れていた。  それは田園風景と青空の境界がなくなり、ステアしていないカクテルのように、色の帯だけが過ぎ去ってゆくのである。  つい先ほど、名古屋を後にしたばかりだった。  清方と雪乃は、その車中の人になっていたのである。 「・・・・怒ってらっしゃると思…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載6 微笑のあと     邪宗門  その料亭は、嵐山の渡月橋の近くにあった。 ラフな格好で来てくれ、と法主の英に言われたが、清方はネクタイこそしなかったが、ジャケットだけは着てゆくことにしたのである。  庭にある竹林を抜け、仲居に通されたその離れの座敷に、英はひとりで待っていた。 「おお、来たか」  彼…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載26 金箔をあかす 「ありがとうございました」  溜息と一緒に梛子が言った。 「いいえ。お疲れになったんじゃありませんか?」  疲れが滲む彼女の目元を見つめながら、海棠が訊く。 「いえ、大丈夫です。海棠さんこそ?」  梛子は藍大島に、黒紅梅地に梅花を散らしたしゃれ袋帯をきりっと締めていた。 「平気です」…
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連載19 金箔をあかす     冬の旅  あれから海棠は、学生時代の同級生や、静一の行きそうな所に片っ端から電話してみたが、依然として彼の行方は分からなかった。  そのことを梛子に告げると、彼女の方でもまったく手がかりがないということだった。 「ありがとうございました」  梛子が、コーヒーを差し出しながら言う。…
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載13 金箔をあかす  玄関のチャイムを押しても、何の返事もない。  海棠は頸をかしげて、しばらく呆然としていた。  ――電話をかけてきたのは、梛子の方ではないか・・・・。  表札を確認すると、ここは間違いなく静一と梛子の部屋であって、海棠は途方に暮れた。  彼は気を取り直して、もう一度チャイムを押す。 …
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THE 読物 ~東 月彦の小説~

連載6 金箔をあかす 「静ちゃん、お茶を習ったことあるのか?」  海棠が訊く。 「うん?・・・・習ったといえば習ったし」  曖昧に静一が答える。 「裏かい、それとも表?」 「・・・・そうだな、道誉流かな」  静一はにやにや笑っている。 「ど・う・よ?」 「そうだ」 「そんな一流あったっけ?」 …
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THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載33 奈良三彩 新年あけましておめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。                 東 月彦       ※  その朝、佐和子は、聚の工房の掃除をしていた。  あれから夫と離婚するつもりで、京都の実家に帰ったが、彼女の居場所はもうどこにもなかったのである。 …
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THE 読物  ~東 月彦の小説~

連載8 奈良三彩 ※お知らせ※ いつもご愛読ありがとうございます。 このたび、当方のブログのトップページに、googleの“サイト内検索”を設置いたしました。 何かと便利な機能ですので、もし、よろしかったら、ご利用いただければ幸いです。 今後とも、宜しくお願い申し上げます。      ※  新公会堂は、奈良公園…
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連載12 薪御能         ※  眸を閉じると、真砂子の瞼のうらには、いつも安念が住んでいる。 彼女は出逢ってからというもの、まったく仕事が手につかなくなってしまった。  『朝まだき』はいまだ完成をみていない。どうしても早暁の色がうまく出なかったのである。 梅雨があけて、羊雲が入道雲に変わるころ、真砂…
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